1958年秋
瑛九の手は自由な動きにゆだねられた。
「青の中の丸」を描く時は丸からはみ出さない気遣いが必要だった。
瑛九はそれまでの自身もわからなかったに違いない、何かの呪縛から解き放たれた。
何物にもとらわれない自由なストローク、吹き出す情熱、自信そして誰もなしえなかった新しい絵画の世界。
瑛九は確信に満ちた。
1936年頃、瑛九が思索の果てに築きあげた絵画理論を、ようやく実現する力を得た。
後は画材だ。
絵の具とキャンバス。
「青の中の丸」50号のキャンバスは木枠から自製した。
今やそんな時間はない。
瑛九は私に速達便を出した。
掲載の図版がその手紙である。
南視
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