湯河原の海岸には海釣り場がある。
消波ブロックが沖合に並び、それが邪魔しているのか、鰺や鰯の姿が見えない。
釣れるのはもっぱらメジナ、あまり歓迎出来ないがベラやゴンズイ、カゴカキ鯛やカサゴの小さいのが混じる。
暖かくなったので、刺身にしてうまいメジナが釣れているか様子を見に行った。
五月二日、連休中とあって家族連れでにぎわっていた。
釣り場は歩道から水際まで緩やかな階段状に整備されている。
芝生のグランドの横を抜け、釣り場の上の歩道に着くと陽光を照り返す海原が、潮風と共に迫っている。
その場にいるだけで気持ちは華やいでくる。
残念ながらメジナを釣り上げた人は見あたらなかった。
この釣り場は砂地でなく、魚礁用のケーソンが沈めてあることもあって、浮子釣りでないと根掛かりしてしまう。
それを知らず砂浜用の投げ釣り仕掛けの人は苦労していた。
一通り見渡してから、その日は帰ろうと階段を上ってくると、最上段に向かい合って座っている二人の青年が目にとまった。
どうやら二人はチェスをしているようだ。
盤は一辺が20センチにも満たない大きさで、並んでいる駒はつまむのも難しそうなほど小さい。
「チェスをしてるんですか、珍しいですね」
私の呼びかけに、
「そう、あまりする人がいなくて」
彼はにっこり笑った。
その日はそのままその場を離れた。
続きは又・・・南視
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