5月5日、再び釣り場へ様子見に行った。
そこには先日と同じようにチェスをする二人の姿があった。
同じ場所で、同じスタイルで、前回と変わらない雰囲気でチェスをしている。
連休中毎日ここでチェスをしているのだろうか。
何か不思議に思えてきた。
学生だろうか?
とりあえず水際へ向い、釣り人の様子を見たが釣れていなさそうだ。
水は澄んでいた。
3メーター程の海底に一台の自転車が沈んでいる。
その上を白い腹をきらりと輝かせて小魚が泳いでいく。
ひょっとしてウルメイワシだろうか?
昨秋、ウルメイワシが釣れないかとサビキ仕掛けで挑戦したが、全くあたりはなかった。
水が澄みその上快晴では魚もどこかへピクニックに違いない。
海を背にして階段を上がると、相変わらず彼等はチェスをしている。
「コンピューターの答えが出た。こうだ」と言って次の手を指したのはいつも笑顔の青年で、胸を張って姿勢がいい。
対する相手は背を屈め、盤面から目を離さない。
彼は見るからに初心者だ。
「こんにちは、今日もチェスですか」
彼は笑顔で振り返って会釈した。
「昔東中野にチェスの出来る喫茶店があって、一二度行ったことがあるんですよ。チェスが好きならステファンツバイクのチェスの話を読んで下さい。」
すると、彼は早速メモをとり
「有り難うございます。早速読んでみます」
と嬉しそうに応えた。
その日はそのまま帰宅した。
あんなことを言ってしまったが、あの本は今見つかるだろうか。
いくらかの無責任は自分の性格とはいえ、一抹の罪悪感を酒で紛らわして寝た。
続く・・・南視
0 件のコメント:
コメントを投稿