5月21日
日が長くなった。
午後4時半に湯河原駅に着いた時、まぶしい日差しの中、鍛冶屋行きバスの後ろ姿があった。
今日は薬で瞳孔を開いている。
目を細めても、辺り一面跳ね返ってくる明るさが耐え難い程の苦痛をもたらす。
次のバスまで25分ある。
ここで時間をつぶす方法は図書館だ。
今日は何をしようか。
文字は見えない。
瞳孔を開いていてなおさら見づらい。
かって興味深く読んだ本の回想をすることにした。
文庫本の推理小説を思い出した。
タイトルはコガネ虫殺人事件だったかな。
この小説に一番感銘を受けたのは、ストーリーではなくセザンヌの水彩に関する美術論だった。
一体あの小説を書いたのは誰だったろう。
早速係員に尋ねることにした。
後でわかったがコガネ虫ではなくカブトムシだった。
これでは図書館員を混乱させるだけだった。
古代エジプトの造形物で、コガネ虫でもなくカブトムシでもない甲虫らしい。
作者はバン・ダイン
知りたかったのはこの名前だった。
なぜなら感銘を受けた美術評論はこの推理小説の中で展開されるセザンヌ論だけのように思われてきたからだ。
帰りのバスの中でバン・ダイクを思い出し次いでバン・ダインを思い出した。
情報は帰ってからネットで調べた。
もう一度バン・ダインを読み直してみよう。
カブトムシ殺人事件
南視
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